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今回は鼓膜のことをお話しします。鼓膜は外耳道の奥にあり空気を伝わってきた音を感じ、耳小骨を介して内耳に伝える役目があります。外側が皮膚、真ん中が固有層、内側が粘膜層の3層構造になっています。震えやすい薄い膜なので外力によって容易に破けることがあります(鼓膜穿孔)。耳かきをしている時に誰かがぶつかったりすると耳かき棒で鼓膜を破くことがしばしばあります。外傷性鼓膜損傷といいますが、痛みがあり、聞こえが少し悪くなり、膜がかかったようになります。ひどいと耳から血が出てくることがあります。耳小骨に損傷がなく感染を起こさなければ2-4週間で破れた穴は閉じることが多いのですが、難聴が残ることもありますので耳鼻咽喉科専門医の診察を必ず受けてください。外耳道に巨大な圧力の変化が起こっても鼓膜が破れることがあります。たとえば近くでガス爆発が起こったときなどは鼓膜穿孔と聴神経障害を同時に起こすことがあります。それほどひどくない圧力変化、例えば平手打ちで耳をたたかれたり、逆に吸引圧を加えても鼓膜は破れることがあります。原因となる事件が起こった直後から膜がかかったような聴力障害と疼痛を自覚し、鼓膜穿孔があれば容易に診断がつきます。外耳道と同様に鼓膜の外側は皮膚なので外耳道炎と同様の炎症を起こすことがあります。鼓膜に穿孔がないのに耳漏が少しずつでて痒みを伴う鼓膜に限局する炎症を鼓膜炎といいます。特殊な細菌やウイルス感染によって起こることがありますので、きちんと原因を同定したうえで治療をするほうが治る早道です。前に航空性中耳炎の時に述べましたが、外界の気圧が変化しても鼓膜をいつも震えやすくするために、のどの上(上咽頭)に耳とつながっている管(耳管)が圧力調節をしています。この管の機能が悪くなると、外気圧が下がれば鼓膜が外に張り出し、外気圧が上がれば鼓膜は中へ引っ張られ耳閉感と疼痛を感じます。飛行機の上昇または下降時、トンネルへ入った時、峠を越えた時、水中に深く潜った時などに経験することがあります。普通は何度か唾を飲むと耳管が開き治るのですが、風邪をひいている時などはしばらく痛みが持続して中耳炎を起こすことがあります(航空性中耳炎)。早めの受診をお勧めします。