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Information & Column
今回は声についてお話しします。一般的に現代の人間は音声言語(ことば)によってコミュニケーションをとっています。声は、喉頭の内側、気道の一番狭いところ(声門)にある声帯によて作り出されます。閉じた左右の声帯のすき間を空気が通る時、声帯が振動して声となります。ヒトは声帯の長さや緊張度を変えることによっていろいろな高さ、大きさ、音色の声を出すことができます。声帯の長さは成人男性で20mm、女性で15mm程度なのに訓練次第でオペラ歌手のような幅のひろいすばらしい音域の音を出すことができます。声帯の粘膜面はゼリーのような柔らかさで左右同じように良く震えると耳に心地好い音を奏でます。声帯の震えがうまくできなくなったり、閉じられなくなるとしわがれ声(嗄声=させい)になります。煙草の吸いすぎやカラオケの歌い過ぎ、長く続く咳などで声帯を酷使すると声帯が赤く腫れあがったり粘膜がブヨブヨになりうまく震えなくなります。また、声帯の片方にでも突起(ポリープや腫瘍)ができれば、うまく閉じられなくなり声がかれてしまいます。声が楽に出なくなると、元の大きさの音を出そうと力んで無理な発声をして、かえってひどくしてしまいます。喉頭は外から触れることができますが、声帯は外から見ることができません。そこで、口の中から鏡で見たり。鼻の中から内視鏡で覗いて見ることになります。声帯の周波数に連動したストロボ光をあてながら声帯の動きを見る検査もあります。炎症や小さなポリープなどでは、原因を取り除き、しばらく声を出さないでいると治ってくることがあります。でも、しわがれ声が治らない時は、声帯に腫瘍(良性または悪性)ができていることがあり、手術が必要なときもありますのでご注意下さい。声を使う仕事や選挙演説などで繰り返し嗄声を起こす人には、声のリハビリテーションが必要です。つまり、腹式呼吸をしながら普通の話し声の高さで、短く区切りながら発声する習慣を身に付けた方がよいでしょう。がなり立てる耳障りな大声だけではコミュニケーションは取れません。内容豊かな話をわかりやすく普通の話し声で耳に心地良く響かせてこそ聞きたくなるものです。どんな楽器にも引けを取らない音声を大切にしてください。そして、しわがれ声に気付いたら早めに耳鼻咽喉科専門医にご相談ください。 早く症状に気がつけば、手術をしなくても治すことができます。進んでしまった腫瘍は声帯を使って出す声を犠牲にして、喉頭を手術的に摘出します。その後、練習が必要ですが食道を使った発声法などがあり、第二の声でコミユニケーションをとることになります。また、私たちがむせないで物を飲み込めるのは、嚥下(ゴックンする)時に喉頭が上にあがり気道をふさぎ、食道の入り口が反射的に開き、物が食道に入っていくからです。老化がはじまり、咽喉の反射が少し鈍くなってくるとむせたり(誤嚥)、のどつまりが起こってきます。若い人でもむせることはありますが、気道に入った異物(食べ物など)は咳反射で外に出してしまいます。いつも飲み込みづらい時は何回か飲み込む動作を繰り返してください。それでも治らないときは、喉頭の周囲や食道の入り口に腫瘍があるかもしれません。喉頭は外から触ることができますが、見ることができないので、診察するのも専門的な知識と道具がいります。逆にいえば、私たち耳鼻咽喉科医にとっては、見てわかる病気が多いので、あれこれ悩むよりは、専門医の診察を早めに受けることをお勧めします。