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前回はイヤーピアス(英語ではear ring)についてお話しましたが、今回は耳の手術についてお話しします。外来でよく行なわれる手術に鼓膜切開術があります。急性中耳炎や浸出性中耳炎、まれに、急性乳突洞炎(耳の後ろの骨の炎症)や耳の炎症が原因で頭の中に急性髄膜炎、急性脳炎、急性硬膜下膿瘍など(頭蓋内合併症)を起こした時に、鼓膜に専用のメスで小さな穴を開け排膿、排液をうながします。鼓膜は三叉神経の支配領域ですから無麻酔で切ると、かなり痛みが強いところです。そこで、表面麻酔液を入れ、さらに電圧をかけて麻酔を行なうと痛みを和らげる効果があります。炎症が強いときには全身麻酔以外は効きにくいのですが、浸出性中耳炎(鼓膜の奥に滲出液が貯まる病気)では、かなり痛みを少なくして鼓膜切開術ができるようになっています。動かなければ、顕微鏡で鼓膜を良く観察しながら鼓膜切開をすることができます。赤く腫れている鼓膜、白や黄色のみみだれ(耳漏)が鼓膜の奥に見える時、鼓膜が奥に引っ込んでいる時などはその場でしますが、場合によっては何日か治療した後に鼓膜切開をして中耳腔に貯まっている膿や滲出液を吸いだすことがあります。何回も鼓膜切開をしていると、鼓膜がうすくなって(菲薄化)痛みがなくなることもあります。また、中耳腔の粘膜の炎症が強いと鼓膜を切ってもすぐ閉じることがあり、短い間に何回か切開を繰り返さなければ治らないこともあります。 鼓膜切開用のメスで切った穴は通常2週間くらいで閉鎖し、聞こえには影響を残しません。
但し、耳漏が出続けていたり、頻繁に切開を繰り返すと、鼓膜に開いた穴が閉じなくなることがあります(鼓膜穿孔)。そのような時には、自分の組織や筋肉等の膜を使って閉じる手術(鼓膜形成術)をすることもあります。繰り返す浸出性中耳炎の時には、鼓膜に開けた穴が閉じないように鼓膜切開後、その穴にシリコン性の小さなチューブを入れること(中耳腔内換気チューブ挿入術)があります。それによって鼓膜の中と外がいつも同じ気圧になって聞こえもよく、滲出液も貯まらなくなります。聞こえは良くなりますが、外からの感染が起き易くなるので定期的な診察が必要になります。耳は外から見えませんが、脳に近くコミュニケーションには不可欠な器官なので、異常があれば早めに専門医にご相談ください。