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航空性中耳炎

 リラ冷えの六月が過ぎ、夏の気配を感じますが、朝夕の涼しさで、風邪をひかれる方も多いようです。そんな時、飛行機に乗り、離陸した途端、急に耳が痛くなりそのまま着陸しても治らなかったという経験をお持ちの方はいませんか?痛みばかりでなくエアーアテンダントの声も遠くに聞こえ、まるで自分だけ水の中に潜っているような感じになることもあります。ひどい時には、耳鳴りやめまいまで起こします。これは航空性中耳炎と呼ばれる病態で、外界の急激な気圧の変化に鼓膜の動きがついていけないために起こります。飛行機が上昇すると外気圧が低くなるために、鼓膜が外側に膨隆します。逆に降下し始めると外気圧が高くなり、鼓膜は内側に陥凹します。このような時、通常であれば、耳の中耳腔と咽頭をつないでいる耳管という管が開くことにより、外気圧と中耳腔の圧を同じにします。この機能がうまく働かず、鼓膜の動きが悪くなったために聞こえずらくなるのです。鼓膜は英語で ear drum または tympanic membrane ともいいますが、太鼓の皮と同じと考えてください。太鼓の皮は、たるんでいても、極度に張っていても、良い音にはなりません。鼓膜は外と内(中耳腔)の気圧が同じ時に一番震え易いのです。普段は物を噛んだり、飲み込んだり、あくびをした時に耳管が開き、中耳腔内への空気の出し入れを無意識にしています。耳管の周りに風邪などで炎症が起こると、うまく開かなくなり、中耳腔内圧力の調節ができず、鼓膜の動きを妨げます。そのために耳閉感、耳痛、難聴、耳鳴、自声強調(自分の声が大きく聞こえること)、眩暈などが起こるのです。治療は、鼻と咽喉の炎症を抑さえる治療を第一に、ひどい時には鼓膜に小さな穴を開けます(鼓膜切開)。繰り返す場合には、鼓膜に小さな管を入れることもあります。予防としては、風邪を引いていて飛行機に乗る時は、鼻からの点鼻液を使ったり、上昇、下降時には眠らずに、唾を飲んだり、あくびをしましょう。それでもだめなら、鼻をつまみ息をこらえると中耳腔へ空気が通ることがあります。よく起こす人はできるだけ誘因となる喫煙、飲酒を避け、乗る前に鼓膜切開を行なう必要があります。この症状でお困りの方は、是非診察にいらして下さい。